自分にしかできな役割や使命感を持った人はみな暇そうに見えました。
地位や名誉がある人たちだから、本当はやることがたくさんあって忙しい。でもそうした人たちは物事の優先順位を知っているから、すべてを自分でやろうとはせず、そのほとんどを人に任せ、自分にしかできないことだけをやる。
だから忙しいのに暇そうに見えた。いわゆる「暇げ」な風貌をしていた。
昔の偉い人はみなそうでした。あれもこれもじゃない。これしかない人生。
何でもかんでも「自分が、自分が」という生き方には品性が感じられません。
──樋野興夫(『明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい』より)
自分がやるほうが速いから自分でやってしまう。
私もどちらかというとそのタイプで、他人に任せて期待したクオリティが上がってこないことにイラつくくらいなら、自分でやってしまおうと思ってしまう。その方が一見するとラクだから。
でも、そういうふうに他の人にも出来る作業を貯めこんでしまったら、自分にしかできない何かができなくなってしまう。余裕のない人のところには、あなただから任せたいなんて責任の重たい仕事は回しづらい。
本当は大量の頼まれごとがあるはずなのに、それをすべて裏でさばいて、人の前では暇気な風貌をしている。そんな器のでかい人になりたいもんだ。