いちまんのいいことば

すてきなことばあつめました

僕にわかるのは、我々には意識というものがあるという事実だけだ。

我々の意識は、我々の肉体の中にある。そして我々の肉体の外にはべつの世界がある。我々はそのような内なる意識と外なる世界の関係性の中に生きている。その関係性は往々にして、我々に哀しみや苦しみや混乱や分裂をもたらす。
 でも、と僕は思う、結局のところ、我々の内なる意識というものはある意味では外なる世界の反映であり、外なる世界とはある意味では我々の内なる意識の反映ではないのか。つまりそれらは、一対の合わせ鏡として、それぞれの無限のメタファーとしての機能を果たしているのではあるまいか?

 

──村上春樹(『村上春樹 雑文集』「自分の物語と、自分の文体」より)

 

意識という存在は面白いものだ。実体はちっとも掴めないのに、人間ひとりひとりの内に1つずつ必ず存在している。こうやって文章を書きながらぐだぐだ考えているのも、意識がないとやっていないことだろう。

たまに無意識というやつが、思ってもないことをやらかして混乱することも、意識しているつもりでもいつの間にかするりと滑り落ちてしまう思いもある。

確かにここにある意識、それ1つで生きているみたいに、周りに影響されたり影響を与えたりしながら成長していく。それを自分の一部分として温かく見守っていくってのも、なんだか面白そうだ。

 

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)

村上春樹 雑文集 (新潮文庫)