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いちまんのいいことば

すてきなことばあつめました

家族をもたないで生きていくのはラクだろうなと思うこともあります。

 家族になってもやっぱりもとは他人ですから、いろいろと面倒なことがあるものです。いまはかみさんと暮らしているのがいいことだと思っていますが、結婚する前は、家族なんていなくて天涯孤独だったらどんなにいいだろうって思っていたこともありました。

 

──中崎タツヤ(『もたない男』より)

 

一人で生きていくのはラクだ。誰にも頼らず、すべて自分で決めて自分で実行していく暮らし。それが最高だと思っていた時期もあった。友人、恋人、家族。血がつながっていようといなかろうと、やっぱり他人は他人で、自分自身の考えがまるごと伝わるわけじゃないし、相手の考えもすべてはわからない。それをシャットアウトしてしまえば、どんなにラクなことか。

だけど、人とまったく関わらずに生きていくことなんてできやしない。仕事をすれば、お客がいるし、仲間がいる。買い物をするにも、レジの人か、宅配便の人はいる。道端でちょっと誰かとぶつかることだってあるかもしれない。

それに、自分一人で辿り着けるところには限りがある。出かける場所も自分の興味のある場所だけになってしまう。それを知らないうちは、それでもよかったけれど、その楽しみを知ってしまうと、一人で生きるのもそれはそれでつまらない。そう思えるようになった。

今でも他人は煩わしい。たぶん、ある程度気を使うってのが煩わしいんだろうな。それでも、それを断ち切って生きていこう、なんて無謀なことはもう二度と思わないんだろうな。

 

もたない男 (新潮文庫)

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