ホクロにこだわる自分自身が奇妙にも思えた
四〇年のつきあいがなければ、そのホクロを取ることには全く抵抗を感じないという確信があるにもかかわらず、なぜか、四〇年の年月にこだわっている。(中略)過去の自分にすがる気持ちなどはないと思っていたはずだが、このホクロをきっかけにまだ多少なりとも残っている自分の過去へのこだわりに気がついた。
──石黒浩(『どうすれば「人」を創れるか: アンドロイドになった私』より)
美容整形でホクロを取るって話からの派生なんだけど、特別、体にとって必要性のないホクロという存在でも、四〇年もの付き合いがあれば、執着してしまうものなんだ、という新鮮な驚きがあった。確かに、私も泣きぼくろがあるんだけど、他の人にもよく注目されるせいか、こいつを取るとなると抵抗を感じる気がする。
過去に執着しないのは難しい。過去というか、これまでの自分かな。今までこれで上手くいっていたんだからという自信とか、今まで一緒にいたんだから離れるのが苦しいっていう愛着とか。そういうずっと自分の中にあった感情とか記憶と別れるのってやっぱり辛いんだよね。
そりゃ、嫌いでも情が移って別れられない人がたくさん出てくるわけだよ。だって、ホクロと別れるのですら抵抗感あるんだから(笑)
著者はその執着に気づいたからこそ、それを取っ払うためにもホクロを取ったらしい。確かにそれも一つの手だ。止めようとする自分を抑えこんで、行動に出てみる。そうすると、新しいモノが入ってくる。執着消すのって難しいけれど、無理やり離れてみるってのはそういう意味では得策なのかもしれない。
どうすれば「人」を創れるか: アンドロイドになった私 (新潮文庫)
- 作者: 石黒浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/10/28
- メディア: 文庫
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