いちまんのいいことば

すてきなことばあつめました

「ラザルス。ナイフを持つならば、昨日までの自分を殺すために持ちなさい」

「お前の思い悩んでいることは、きっと帝都中の人間を殺し尽くしたところでどうなるものでもないよ。ナイフを向ける先が間違っている」

 

──オブライエン(『賭博師は祈らない(4)』より)

 

賭博師として小金を稼ぎながらその日暮らしをしていた主人公のラザルス。ある時、勝ち過ぎた大金を消費するために買った奴隷の少女と出会ったことで、徐々にその戦い方が変わっていく。
そのシリーズ第4巻。
変わり続けたラザルスは、ついにそれまでの賭博のやり方で立ち行かなくなってしまう。守るものができて、戦い方を変えざるを得なくなったが、変わることができずに大失敗を犯した。
逃げ込んだ先は、馴染みの教会。切羽詰まったラザルスは、牧師のオブライエンにナイフを向ける。そこで牧師が彼に語った言葉である。

 

「昨日までの自分を殺す」
なんて難しいことなのだろうか。馴染みの手順、いつも通りの生活、良い変化も悪い変化も等しく違和感を覚えてしまって、すぐに元通り。人間には元来、安定を好み、変化を嫌う特性が多かれ少なかれ備わっている。だから変わるのは難しい。
私も最近のぐうたら気味の生活を改善しようと目下奮闘中である。芳しい成果はまだ上がっていないが、続ければそのうち改善されるぐらいの気持ちで取り組んでいる。ひとまずは、余計なスマホ操作(ゲーム、ネットサーフィン)を減らして、早寝早起きに習慣をシフトしていくことを目標にしている。案外これが難しいんだよね。
人には怠惰欲なんてものもあるらしい。私のこれはまさにその欲に負けた結果なんだろう。だらだらスマホを眺めているのは、何も生み出さないのになんとなく心地よい。
でも、その心地よさに負け続けていたら、なんだか気持ちがささくれだってくる。何も生み出していないことによる焦燥感が生まれる。それはそれでストレスが溜まってくる。
ただ、それを周囲に八つ当たりするわけにもいかない。変わるべきは自分であって、周囲の人間ではないのだから。

 

変わるのは難しい。でも、フィクションの世界とはいえ、ラザルスは変わった。ナイフの向ける先を変えて、新しい戦い方を身に着けていった。人は変われる。変えようと強く願えば。そう思って、これからも前進していきたい。

 

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)