『決死の覚悟』と『死を覚悟する』のは、似ているようでまるで違う。
「──お前、死ぬ覚悟はあるか?」
社の声のトーンが変わる。
(中略)
「ありません」
はっきりと答える。それは、ヤドカリ自身の答えでもあった。『決死の覚悟』と『死を覚悟する』のは、似ているようでまるで違う。ヤドカリは一度死んでいるからこそ分かる。人は一度でも、『生』を諦めたら終わりだ。特に、厄人ならばなおさら。諦めた瞬間に、足元から『死』が這ってくる。裾を引っ張り始める。
──ヤドカリ(『アンダーワールドストリートへようこそ』より)
肉体を失い魂のみの存在になったヤドカリ。目を合わせた人間の体に移動できる彼は、偶然出会った四ツ葉つゆりの体に乗り移り、墓側社の元に潜入する。
元々、出て行け!と社に言われて、とぼとぼ歩いていたつゆりが戻ってきて、社が思わず尋ねたところからの会話。
「『決死の覚悟』と『死を覚悟する』のは、似ているようでまるで違う」ってのがいい。
もういつ死んでもおかしくない。このまま死ぬだな。そんな絶望の状況で仕事を続けるなんてブラック企業も世の中にはまだあるらしい。
こうなってしまっては、もうおしまいだ。生きているのに、死んでるみたいに生活して、いつか本当に命を落としてしまう可能性が高い。
逆に、スタートしたばかりの会社で、意欲は満点。でもやることは山積みで時間は足りない。そんな時に思うのが、死ぬ気で馬車馬のように働くってこと。それは限界ギリギリまで自分の力を出しきることだから、上とは全然違う。
それを履き違えてはいけないのだ。
アンダーワールドストリートへようこそ ~不運な女の子と呪われたボディガード~ (メディアワークス文庫)
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