いちまんのいいことば

すてきなことばあつめました

命がけで熱くなれるものが見つかったなら、そいつの人生は楽しいに決まってる。

 創風亭破楽は、前に俺に言った。
 人は死ぬ瞬間に、幸せだったと思ってはダメだ。あぁ楽しかったと感じなければならない、って。
 常識的に生きていても、得られるもんなんてたかが知れてるだろう。
 命がけで熱くなれるものが見つかったなら、そいつの人生は楽しいに決まってる。
 だったら、やるしかないっしょ。
 俺は、楽しかった、と言って死にたい。そのために、もっと落語と向き合いたいと思う。
 
──千野願(『噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~』より) 

 

不定期更新再開と言いながら、一気に1年以上ご無沙汰するとかこれ如何に。

会社ブログの更新をちょろちょろやって執筆熱が再燃してきたのと、そういえば、この1年ストレスMAXだったのがようやく落ち着いたのもあって、久々に再開の運びとなりました。

週一更新目標。最低月一更新を目指して言葉を綴っていきたいと思います。通勤時間が伸びたから、ネタ元の読書には困らないはず(笑)

 

閑話休題

 

今回紹介する本は、第24回電撃小説大賞で《選考委員奨励賞》を受賞した作品。ここ数年、新人賞受賞作は電撃大賞だけ全作品読んでいるので、その中のひとつ。

就職活動中の大学生の千野願は、最終面接前のタクシーで稀代の天才落語家・創風亭破楽の落語を聞いて感銘を受け、右も左も分からない落語の世界に身一つで飛び込む。厳しい芸の世界。厳しい師匠、優しい兄姉弟子たち、落語のらの字も知らなかった願が、落語家への道に踏み込んでいく。

勢いで大学辞めちゃったり、弟子入りするために何度も破楽に頼み込んだり、若いっていいなぁと思えるような青春あり、血はつながらないながらも、弟子と師匠の関係でつながる創風亭一門の心温まりクスリと笑える人情あり、そして、ずぶの素人の願が噺家としての第一歩を踏み出す成長あり。

ほっこりしたい人、目指す未来に悩んでいる人にオススメしたい一冊だった。

 

紹介した言葉は、クライマックスの願の独白。師匠の言葉を受け取りながら、自らさらに落語への熱意を高めていく場面。前後のシーンが有るともっと感動的だけれど、それは読んでからのお楽しみ。

私自身は、あまり一つのことに熱中できないから、こういう物語を読むといつも胸がざわざわする。けれど、そこでハタと振り返ると、自分はどれだけの趣味をもって、どれだけのことをやっているんだという話になる。何せ、このブログ執筆に始まり、現時点で趣味と言えるのは、編み物、スプラトゥーン、連ドラ鑑賞、アニメ、読書、御朱印集め、手帳・・・まだ忘れているのがありそうだ。そんな状態なのだから、これはこれでありかなとも思う。

人生をかけるほどの熱量をもったたった一つが見つかるのも素敵だが、日常を彩る小さな楽しみがたくさんあるのも、それはそれで楽しい人生じゃないか。とにかく、一点集中でも熱意拡散でもいいから、何かにハマるってのは素晴らしい。