いちまんのいいことば

すてきなことばあつめました

上手く書けた、とも思えません。でも、精一杯書きました。逃げることなく、立ち向かいました。作中で、「僕」が命題に対してそうであったように。

 こんなつらい話を、なぜ書くのか。その問いに明確な答えがないように、「僕」もまた、探していたすべての答えは得られなかったのではないか。そんな風に思います。ただ、それでも私は書きました。そしてまた、「僕」も……そんな風に、今は思えます。

 

──紅玉いづき(『現代詩人探偵』あとがきより)

 

「死ななければ詩人にはなれないのか」。かつてオフ会で知り合った詩人たち。その死を調べ直すことで、そんな命題に向き合った主人公の物語。

痛快な謎解きを期待して読むと、物語から漂う重苦しさに、読むのが辛くなるかもしれない。引用にもあるように、作者の生みの苦しみが文章にも滲んでいるようで、ただただ気分が憂鬱になる部分もあった。ただ、読み終わってみると、それだけじゃない何かが残っていた。

 

ちょうど最近、上手くいかないことが多くて、周りがどうこうというよりは、求めている自分と現実の自分のギャップに苦しんでいる感覚に陥っている。理想が高すぎるのかもとか、自分には無理だとか、そういう考えが頭を何度もよぎってくる。そんな空気を払いたくて、逆に憂鬱な本の紹介をしている。

本作は、確かに明るい本ではない。でも、最後には「生きるしかないな」と思わせてくれる作品だ。苦しみ抜いた先に何があるかはわからない。わからないまま終わるのかもしれない。それでも、まったく意味のない前進なんてない。

三歩進んで二歩下がる。そんなゆっくりしたペースでも前に進んでいけば、何か新しい景色が見える。そう思って進むしかないんだ。

 

現代詩人探偵 (創元推理文庫)

現代詩人探偵 (創元推理文庫)